共同研究・競争的資金等の研究課題 - 小島 隆
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生体バリアの機能分子病理学-細胞間隙における分子通過の制御機構
基盤研究(B)
研究期間:
2002年-2004年澤田 典均, 小島 隆, 千葉 英樹, 飛岡 弘敏
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タイト結合とヒト疾患の関係を検討し,以下の点を明らかにした. 1.タイト結合の転写レベルの制御 マウステラトーマF9細胞に転写因子HNF-4αを発現させると,occludin, claudin-6,claudin-7のタイト結合蛋白の発現が誘導され,タイト結合機能が上昇した.しかしアドヘレンス結合蛋白E-cadherinとnectinの発現は変化しなかった.一方,HNF-4αの発現によりF9細胞にCDKs阻害因子p21が誘導され,細胞の分裂が抑制された. 2.血管内皮細胞のタイト結合 血管内皮細胞にclaudin-5の発現を誘導すると,機能的なタイト結合が再構成された.さらにPKAが,claudin-5タンパクを標的分子としてタイト結合のバリア機能を増強し,claudin-5配列内のThr^<207>がTriton-X100非可溶性claudin-5の量やタイト結合の機能に深く関与していた. 3.肝細胞のタイト結合 肝再生過程では,ギャップ結合とタイト結合がダイナミックに変化する.部分肝切除と初代培養肝細胞を用いて検討したところ,この変化は,おもにp38MAPキナーゼシグナルによって制御されていた.タイト結合蛋白occludinを欠損したマウスから肝細胞を分離し,occludinの機能を検討したところ,この肝細胞では生存シグナルの伝達が低下し,アポトーシス刺激に感受性が高かった. 4.その他 活性化raf-1は,タイト結合蛋白の発現を低下させ上皮細胞を線維芽細胞様形態へと変化させること,ヒト子宮内膜癌が脱分化するに従い,occludinの発現が低下すること,ヒト口蓋扁桃のタイト結合発現を調べたところ,陰窩上皮に特有なclaudin種を発現していた.
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肝再生におけるギャップおよびタイト結合の役割
基盤研究(C)
研究期間:
2001年-2002年小島 隆
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ギャップ結合は、細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たし、細胞の増殖および分化に密接に関係していると考えられている。そして、部分肝切除後及び肝傷害後などの肝再生時においては、肝細胞のギャップ結合蛋白の発現及びその機能は、一過性に低下することが知られているが、詳細なメカニズム及びその意義については未だ不明である。さらに肝再生時におけるタイト結合の変化については、タイト結合構造物を構成する主な蛋白であるclaudinが、最近発見されたため、その詳細な変化はよく分かっていない。一方、肝細胞の増殖あるいは増殖抑制にMAPK, PI3K, p38MAPK経路によるシグナル伝達が重要な役割を果たしていることも明らかとなってきた。そこで今回我々は、肝再生時におけるギャップおよびタイト結合の発現調節及びその役割を解析する目的で、培養肝細胞を用いて解析した。ギャップ及びタイト結合高発現初代培養ラット肝細胞を用いて、増殖刺激のオンオフによるin vitro再生肝モデルを作製し、シグナル伝達経路であるMAPK, PI3K, p38MAPK経路の各インヒビター(PD98059,LY294002,SB23850)を処置した結果、培養肝細胞の増殖はPI3K経路に非常に依存し、増殖刺激によるギャップおよびタイト結合の発現およびその機能の変化は、MAPKおよびp38MAPK経路で複雑に調節されていた。次に、内在性のタイト結合蛋白を高発現しているマウス肝細胞株を用いて、細胞周期のM期にみられるmidbodyを詳細に検索した結果、肝細胞のタイト結合構造物を構成する膜貫通蛋白であるoccludin及びclaudin-1のmidbodyへの濃縮がみられた。以上の培養肝細胞に認められたギャップおよびタイト結合の発現変化及びその調節機構は、肝再生においてもみられる可能性が高いと考えられた。
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ギャップ結合による肝がん発生の抑制メカニズム
特定領域研究(C)
研究期間:
2001年小島 隆, 澤田 典均
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ギャップ結合とくにCx32が肝がん発生を抑制するメカニズムを解明するために,今回我々は,培養肝細胞を用いて、Cx32と肝細胞の増殖および分化に焦点を絞って検討した。さらに肝細胞の増殖あるいは増殖抑制に重要な役割をもち、ギャップ結合蛋白の発現調節にも関与する可能性があるMAPK,PI3K,p38MAPKによるシグナル伝達経路においても同様にin vitroで検討した。 1.ギャップ結合の肝細胞の増殖および分化への関与の解析 Cx32ノックアウトマウスから作製した初代培養肝細胞、さらにその細胞を継代により不死化させ、ヒトCx32を遺伝子導入した肝細胞株を用いて解析した結果、Cx32ノックアウトマウスの初代培養肝細胞では、正常マウスと比較してstress actinおよび細胞増殖度の増加がみられた。Cx32遺伝子導入肝細胞株では、増殖抑制はみられないものの、上皮分化の指標であるタイト結合蛋白およびその機能の増加、circumfential actin形成の増強も認められた。このタイト結合の発現誘導は、Cx32変異遺伝子、Cx26およびCx43遺伝子の導入ではみられず、コミュニケーション阻害薬剤でも抑制が認められた。以上の結果は、Cx32の発現およびそのコミュニケーション能は、正常肝細胞では増殖よりむしろ分化に密接に関与している可能性が考えられた。 2.シグナル伝達によるギャップ結合の発現調節機構の解析 ギャップ結合高発現初代培養ラット肝細胞を用いて,増殖刺激のオンオフによるin vitro再生肝モデルを作製し,シグナル伝達経路であるMAPK,PI3K,p38MAPKの各inhibiter(PD98059,LY294002,SB23850)を処置した結果、増殖刺激によるギャップ結合の発現および機能の変化は、MAPKおよびp38MAPK経路で調節されていることが明らかになった。
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体外肝組織再構築と組織移植による肝不全治療法の研究
基盤研究(B)
研究期間:
2000年-2001年望月 洋一, 小島 隆, 三高 俊広, 平田 公一, 竹田 寛
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我々は、成熟ラット肝臓より肝幹細胞の一種と考えられる小型肝細胞を分離培養し、増殖と成熟肝細胞への分化を調節する方法を見いだした。小型肝細胞は増殖しコロニーを形成し、非実質細胞、特に星細胞の分泌する細胞外基質が小型肝細胞の周りに蓄積することによって成熟化し、3次元的な類肝組織を形成する。立体構造構築には、基底膜の形成が必要であり、小型肝細胞の成熟化は、非実質細胞などが分泌している増殖因子によるというよりも分泌された細胞外基質による誘導と考えられた。このことは、非実質細胞の増殖が抑制されると小型肝細胞の増殖が促進されるという結果とも一致する。分化誘導を受けた小型肝細胞は、培養後、数週間経過しているにも関わらず、成熟肝細胞が豊富に発現している転写因子のHNF4,HNF6,C/EBPalphaなどを強く発現するようになり、それら転写因子によって発現調節されているアルブミン、トランスフェリンばかりではなく、尿素合成に必要carbamoylphosphate synthetase Iやアンモニア代謝に必要なglutamine synthetaseが発現するようになり、薬物代謝のcytochrome P450の誘導がかかるようになる。この結果は、成熟化した小型肝細胞が生体内の肝細胞と同等な機能を発揮できるということである。小型肝細胞はコロニーの状態での長期間の凍結保存(液体窒素を使うことなく-80℃で良い)が可能で、最長90週凍結保存した小型肝細胞を増殖させることに成功した。平均60%の生着率で生着した小型肝細胞は増殖する。2週間でコロニーの面積にして約7倍に、アルブミンの産生は約5倍になる。凍結保存した小型肝細胞も成熟化を誘導することが可能であった。 ヒト肝細胞を分離し、小型肝細胞の増殖を認め、一部にラットで見られるような立体構造をとる可能性を認めた。また、ヒト肝細胞をコラーゲンからなるscaffoldの中で培養すると胆管上皮の形成が誘導され、その下で成熟肝細胞が3次元的構造を形成しつつ長期間生存した。scaffoldの中では、胆管や毛細血管の形成が認められた。 また、ラット骨髄から間葉系細胞を分離培養し、初代培養肝細胞と共培養すると小型肝細胞の増殖が促進され、成熟肝細胞の分化能の維持に良いことが分かった。
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ギャップ結合による肝がん発生の抑制メカニズム
特定領域研究(C)
研究期間:
2000年小島 隆, 澤田 典均
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我々は,ギャップ結合とくにCx32が肝がん発生を抑制するメカニズムを解明するために,Cx32欠損マウスを用いて,Cx32と肝細胞の増殖および分化に焦点を絞ってin vivoおよびin vitroで検討した。In vivoの実験では,部分肝切除後,Cx32欠損マウスではwild typeマウス(C57BL/6)と比較して肝細胞の増殖抑制がみられた。Cx32欠損マウスの発がん物質投与実験より,Cx32欠損マウスはwild typeマウスと比較して肝腫瘍の増加がみられた。In vitroの実験では,まず初代培養ラット肝細胞の解析結果から,肝細胞に発現しているギャップ結合蛋白であるCx32とCx26のうち,Cx32が上皮の分化の指標のひとつであり細胞の極性に関与しているタイト結合と密接な関係があることが分かった。次に,Cx32欠損マウスの初代培養肝細胞の解析結果から,Cx32欠損マウスの肝細胞の増殖度の明らかな増加がみられた。さらに,Cx32欠損マウスの初代培養肝細胞から継代培養により肝細胞株を樹立し,この細胞株にCx32遺伝子を再導入した結果,タイト結合の誘導およびアクチン形成の増強がみられ,分化の亢進が認められた。以上のことより,Cx32が肝がん発生を抑制するメカニズムとしては,Cx32の発現およびそれを介した細胞間コミュニケーションが,肝細胞の増殖だけでなく分化をも調節している可能性が考えられた。
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遅発性神経細胞死におけるグルタミン酸受容体・gap結合の細胞生理学的研究
基盤研究(C)
研究期間:
1999年-2000年小黒 恵司, 増沢 紀男, 川合 述史, 小島 隆
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1)Antisense GluR2を用いたGluR2仮説の検証 ラット脳室内にGluR2 antisense oligodeoxynucleotide(ODN)を定位的に脳室内に投与し、組織化学的に細胞死誘導の有無を検討した。10nM、5μlのGluR2 antisense ODNを12時間毎に4回の注入を行った結果、最終注入2日後より海馬CA1およびCA3領域に部分的神経細胞死を認めた。antisenseの有効性の確認の為行った、in situ hybridization及びWestern blotにより、GluR2 mRNA/蛋白の減少が経時的確認された。NMDA型受容体(AP5,MK-801)およびAMPA型受容体(CNQX,Naspm)拮抗薬を同時投与したところ、後者でのみ細胞死の誘導が抑制され、本現象にCa^<2+>透過型AMPA型受容体が強く関与していることを明らかにした。さらに,通常では細胞死の得られない2分間の閾値下前脳虚血を与えた砂ネズミにおいて、事前に脳室内にGluR2 antisenseを投与した動物では、海馬CA1領域に遅発性神経細胞死が得られ、antisenseによる人為的なGluR2 knock downによって誘導される細胞死が、虚血による遅発性神経細胞死と共通のメカニズムを持つものであることが強く示唆された。以上の実験結果は遅発性神経細胞死におけるGluR2仮説を強く支持するものである。本研究結果の概要はJ Neuroscience 19:9218-9227,1999等に発表した。 2)新たなAMPA受容体拮抗薬の開発およびAMPA受容体拮抗薬脳室内投与によるtherapeutic windowの決定 5分間前脳虚血0,6,24時間後の砂ネズミー側脳室内に、AMPA拮抗薬Naspm(naphtyl acetyl spermine)を投与した所、10mMの濃度で、0&6時間後に虚血保護効果が認められた。NaspmはGluR2を欠いたAMPA受容体の特異的拮抗薬であり遅発性神経細胞死におけるGluR2の重要性を示唆するとともに、虚血保護の為には、早い時間帯から同受容体をブロックする必要性のあることが示唆された。 3)脳虚血におけるgap junctionの役割 これまで全く報告のなかった前脳虚血(20分)における海馬gap junction(connexin32,36,43)の経時的な変化を後述のknock-out mouseの背景strainであるC57BL/6マウスを用い、in situ hybridization,Northern blottingおよびWestern blottingによりmRNA/蛋白レベルで観察した。この結果、いずれのconnexinもmRNAレベル、蛋白レベル共に変化がないかわずかに増加することが分かった。 さらに、虚血におけるgap junctionの機能的役割を知るため、Cx32 knock-out mouseおよびwild type mouseの両側頚動脈を10分間遮断し、3日後、海馬の組織学的変化の違いをを観察した。その結果、Cx32 knock-out mouseでは虚血に対するsusceptibilityがwild typeより高いことが明らかになった。このことは、gap junctionに虚血保護効果のあることを示唆するものである。 本研究結果の概要は1999年8月及び10月のinternational gap junction meeting(スイス)、米国神経科学会(マイアミビーチ)、2000年10月の日本脳神経外科学会総会にて発表し、J Neuroscienceに投稿中である。
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肝細胞の増殖および分化におけるgap junctionの発現調節機構の解明
奨励研究(A)
研究期間:
1996年-1997年小島 隆
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、細胞間のcommunicationに重要は役割を果たしているgap junctionは、細胞の増殖および分化に密接に関係している。肝臓のgap junctionは発生、再生時或いは発癌過程に著しい変化がみられることが知られているが、その時のgap junctionの発現調節機構についてはよくわかっていない点が多い。最近我々は、初代培養ラット肝細胞計に於いて、分化誘導物質である2%dimethylsulfoxide(DMSO)および生理的濃度のglucagonを投与することにより肝細胞のgap junctionの構成蛋白であるconnexin32(Cx32)およびconnexin26(Cx26)を高度に再発現させ、且つ長期にその発現を維持させることに成功した。さらにこの培養系を用いて、gap junctionを高度に発現維持し増殖が抑制されている細胞をepidermal growth factor(EGF)刺激により60%以上の細胞をDNA合成に入れ、DMSO投与により再び増殖抑制させる系、いわゆるin vitroにおける再生肝-モデル系を確立した。今回は、このin vitro再生肝モデル系を用いて、培養肝細胞の増殖および分化におけるgap junctionの発現の変化を詳細に観察した。結果、gap JunctionのmRNAはG1期に一過性の増加後、S期直前に著しく減少し、細胞の増殖中は低レベルであった。増殖抑制刺激により早期にCx32 mRNAは元のレベルまで回復したが、Cx26 mRNAにおいては低レベルのままであった。蛋白、形態および機能レベルにおいてもほぼ同様の変化がみられた。また増殖抑制時においてfreeze fracture的にgap junction plaqueの細胞分化の指標であるcell poralityとの密接な関係もみられた。
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肝細胞におけるギャップおよびタイト結合蛋白の発現調節機構の解析
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耳鼻科領域におけるギャップおよびタイト結合と疾患