共同研究・競争的資金等の研究課題 - 本望 修
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遺伝子組換え骨髄幹細胞の静脈内移植による脳梗塞治療の基礎的研究
基盤研究(B)
研究期間:
2004年-2007年本望 修, 寶金 清博, 濱田 洋文
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ラット脳梗塞モデルに対して、遺伝子組換え骨髄幹細胞を静脈内に移植することにより、脳梗塞の治療を目的とした基礎的研究を遂行した。 (1)ラット中大脳動脈閉塞モデルへの骨髄幹細胞移植における治療効果の機序の解明 全身麻酔下に中大脳動脈を遮断することで、脳梗塞モデルとした。骨髄幹細胞を静脈内に移植した場合の治療効果の機序として、(1)局所のサイトカイン濃度が増大することによる神経保護作用、(2)血管新生の誘導、(3)アポトーシスの抑制効果、(4)抗浮腫効果、等が関係することが解明された。 (2)ラット中大脳動脈閉塞モデルへの遺伝子組換え骨髄幹細胞の移植実験 サイトカイン遺伝子(BDNF,GDNFなど)および血管新生遺伝子(VEGF,/Angiopoietin-1,PIGFなど)を骨髄幹細胞に導入し、移植治療の効果を検討した結果、治療メカニズムを増強する遺伝子を導入することで、更なる治療効果の向上が見込めることが判明した。 (3)末梢血中の幹細胞の検討 末梢血に存在する間葉系幹細胞の分離・培養・増殖する技術を確立し、脳梗塞ラットへの移植実験で、骨髄中に存在する間葉系幹細胞と同等の治療効果が期待できることを検証した。 以上のように、補助金は補助条件に従って、非常に有効に使用されている
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骨髄幹細胞の末梢血中への導引による脊髄損傷治療効果の基礎的解析
基盤研究(C)
研究期間:
2004年-2006年野中 雅, 本望 修, 寶金 清博
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当該研究計画では、骨髄幹細胞を利用することで、脊髄損傷に対する新治療法を現実化するための基礎的研究およびトランスレーショナルリサーチを目的とした。 骨髄中には神経再生に有用な骨髄間葉系幹細胞(bone marrow derived mesenchymal stem cell : bMSC)が存在することは判明していたが、末梢血中に同様の幹細胞(peripheral blood derived mesenchymal stem cell : pMSC)が存在するか否かは不明であった。しかし、骨髄幹細胞を骨髄より取り出し末梢血中に移植すると、末梢血循環にのって脊髄に到達し、治療効果が発揮されることは判明していた。 当該研究で、(1)末梢血中に存在する幹細胞の基礎解析、(2)末梢血中に存在する幹細胞の神経系細胞へのin vitroおよびin vivoでの分化、(3)骨髄に固定されている骨髄幹細胞の末梢血中への動員、を研究し、末梢血に存在する幹細胞が脊髄損傷の治療に有効である成果を得た。
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心肺停止・蘇生後脳症におけるアポトーシス検出画像の開発
萌芽研究
研究期間:
2004年-2005年寶金 清博, 小柳 泉, 本望 修, 三上 毅, 鹿野 恒
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本研究では、心肺停止後の蘇生脳に起こる脳の変化を画像でとられ、その病理所見との比較を行うことで、予後診断へ役立てることを主目的としている。そこで、まず、高度脳虚血-再灌流モデルにおける、実験用高磁場MRIの検討を行った。また、臨床例における、心肺停止後の蘇生脳の画像、代謝を検討した。さらに、ラット心肺停止モデルにおいて、実験用高磁場MRIと早期病理診断(アポトーシス検出)との比較解析を行った。 1.実験高度脳虚血-再灌流モデルのMRI ラットの心肺停止後の蘇生後脳の状態をsimulationするモデルとして、ラットの中大脳動脈閉塞・再灌流モデルを用いて、高磁場(7テスラー)のMRI装置を用いて、画像撮像を行った。その結果、再灌流後、fractional anisotrophy image(FA画像)において、再灌流脳において異方性が早期に失われ、その後、そのanisotrophyを失った範囲において、梗塞の出現と慢性期において萎縮が進行することが示された。また、この部位において、magnetic resonance spectroscopy(MRS)を行うと、乳酸の出現とさらに正常状態では見られないlipidの出現が見られた。 2.人における蘇生後脳症のMRI・MRS 心肺停止後の蘇生後脳症で、予後不良例、良好例における、拡散強調画像、MRSの差異を検討した結果、予後良好例では、実験と同様に、anisotrophyが保持され、嫌気性代謝のマーカーである乳酸の出現が認められなかった。これに対して、予後不良例では、早期から異方性が喪失し、乳酸が出現することが示された。 3.ラット心肺停止モデルにおける実験用高磁場MRIと早期病理診断(アポトーシス検出)との比較解析 ラットを用いて、心肺を完全停止(9分間)後、蘇生させるモデルを作成した。同モデルでは、発症早期において実験用高磁場MRI上、異常信号を捕らえることが出でき、また、早期病理診断では神経細胞がアポトーシスに陥っていることを確認している。以上より、心肺停止後の蘇生脳に起こる脳の病態生理的変化と、発症早期のMRI画像所見が相関することを突き止め、予後診断とともに、早期治療の効果判定に有用となると思われた。
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神経幹細胞による筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法の開発
基盤研究(C)
研究期間:
2002年-2004年永野 功, 阿部 康二, 本望 修
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明をすすめるために、ALSにおける運動ニューロン死の機序について、ALSのモデル動物である変異型ヒトSOD1(G93A)トランスジェニック(Tg)マウスを用いて解析した。その結果、G93ATgマウスにおいては低酸素刺激に対するVEGFの誘導が阻害されていることを見出した。VEGFが運動ニューロン死に関与する可能性をさらに調べるために、ラット脊髄でVEGFの受容体Flk-1の発現をブロックし、さらに低酸素曝露を加えた。その結果、運動ニューロン死が誘導されることがわかった。これらの結果から、ALSの発症にVEGFの誘導障害が関与している可能性を示唆した。 神経栄養因子IGF-1によるALS治療の可能性を調べるために、G93ATgマウスの脊髄腔内にIGF-1投与してその効果をみた。IGF-1投与にてマウスの寿命は11%程度延長し、運動機能も比較的に保持された。さらに、運動ニューロン数の減少も対照に比べ約57%程度少なかった。この結果をふまえて、ALS患者へのIGF-1髄注療法治験を実施した。その結果、IGF-1髄注は安全で忍容性が高いことと、ALSによる運動機能低下をわずかながら有意に阻害することを明らかにした。 ついで、神経幹細胞によるALS治療の道筋を探るために、内因性の神経幹細胞を増殖、誘導することを試みた。G93ATgマウスの脊髄腔内にEGFとFGF2を投与することによって、神経幹細胞の数を増加することを観察した。これらの細胞はグリア細胞に分化するものが多かった。この結果から、内因性の神経幹細胞を誘導することによって運動ニューロン死を制御する可能性が示された。
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遺伝子組み換え骨髄細胞移植による脳神経組織の機能的修復
基盤研究(B)
研究期間:
2002年-2003年本望 修, 濱田 洋文, 宝金 清博
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遺伝子組み換え骨髄幹細胞の脳神経領域における治療効果を、下記の方法で解析した。 1.遺伝子組み換え細胞の作成 (1)骨髄幹細胞にhTERT遺伝子を導入し、不死化した。 (2)骨髄幹細胞にBDNF遺伝子を導入し、神経保護作用を増強させた。 (3)骨髄幹細胞にIL-2遺伝子を導入し、抗腫瘍作用を増強させた。 2.上記細胞の治療効果の確認 (1)hTERT遺伝子を導入した不死化細胞のラット中大脳動脈閉塞モデルへの移植実験 全身麻酔下に中大脳動脈を遮断することで、脳梗塞モデルとした。移植効果の検討は以下のごとく施行し、良好な結果が得られた。 (A)移植幹細胞のホスト虚血脳内での生着・分化を組織学的に検討した結果、ドナー細胞はホスト組織内で良好な生着・増殖・分裂・分化・遊走・組織修復を示すことが判明した。 (B)モーリス水迷路試験で記憶・学習能力・高次機能を解析した結果、移植により著名に症状が改善することが判明した。 (C)トレッドミル運動負荷試験により運動機能の解析した結果、移植により顕著に運動機能が回復することが判明した。 (D)動物実験用高磁場NMR装置1(7テスラー)を用い、同一個体の脳梗塞巣を経時的に画像診断学的に解析した結果、移植による治療効果は画像診断上も著名であることが判明した。 (2)BDNF遺伝子を導入した細胞のラット中大脳動脈閉塞モデルへの移植実験 上記脳梗塞へ移植し治療効果を判定したが、良好な結果が得られた。特に、脳梗塞から時間が経過した状態において治療を開始し場合においても良好な結果が得られたことは特記すべきと思われた。 (3)IL-2遺伝子を導入した細胞のラット脳腫瘍モデルヘの移植実験 初代培養の骨髄幹細胞でも抗腫瘍効果が見られたが、IL-2遺伝子を導入した細胞では、特に治療効果が高いことが判明した。 以上のように、補助金は補助条件に従って、非常に有効に使用された。
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脳腫瘍の標的化を目指した細胞・遺伝子治療の開発
基盤研究(B)
研究期間:
2002年-2003年濱田 洋文, 佐々木 勝則, 本望 修
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本研究では、難治性の悪性脳腫瘍に対する効果的な治療法め開発を目的として、A)脳腫瘍を標的化できる新しい変異型ウイルスベクターの開発、ならびに、B)脳神経組織標的性の高い細胞の移入療法の開発を中心に、脳腫瘍の特異的な標的化を目指した細胞・遺伝子治療の基礎研究ならびに実用化研究を行っている。 間葉系幹細胞(MSC、mesenchymal stem cell)を用いたラット脳腫瘍モデルの遺伝子治療:ラット大腿骨骨髄から初代培養MSCを調製した。Fischer344ラット脳内に、DsRed標識9Lグリオーマ細胞を移植し、1週間後に遺伝子導入MSCを移植し、経過を追った。MSCは腫瘍全体に拡がり、特に正常脳組織と腫瘍の境界部に多く分布していた。9L脳腫瘍をhIL2遺伝子導入MSCで治療すると、著明な延命効果が得られた。浸潤性の悪性神経膠腫に対する遺伝子治療のベクター細胞としてMSCが有望である。 一方、グリオーマでは、Advの受容体CARの発現が低く、従来型のベクターでは遺伝子導入効率が非常に低い。Ad5の受容体CARと結合しないAd40の短いファイバー(F40S)を有するファイバー変異型アデノウイルスをベースとして用い、脳腫瘍選択的な遺伝子導入システムの構築を目指した。ヘパランスルフェートを標的としたK7(lysine7個のストレッチ)モチーフをファイバーに含むF40S-K7変異型ウイルスを用いると、F/wtに比較して悪性神経膠腫に対して数十倍高い遺伝子導入効率が得られた。脳腫瘍に対する選択的標的化の候補分子を探索するために、抗体のFcドメインに結合するProtein AのZ33モチーフをHIループに含むAdv-FZ33アデノウイルスを作成した。今後、このシステムを用いて、脳腫瘍細胞に対して選択的標的化の可能な表面分子と抗体の組み合わせを探索してゆく。
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腫瘍の特異的標的化を目指した遺伝子治療法の開発
特定領域研究
研究期間:
2000年-2004年濱田 洋文, 加藤 和則, 中村 公則, 本望 修, 伊藤 克礼, 佐々木 勝則
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腫瘍に対する選択的標的化の候補分子を探索するために、抗体のFcドメインに結合するProtein AのZ33モチーフをAd5ファイバーのHIループに持つAdv-FZ33アデノウイルスを作成した。CARをほとんど発現しないヒト膵癌細胞AsPc1やヒトメラノーマ細胞A375に対する遺伝子導入効率をEGFPないしb-gal遺伝子発現で測定した。AsPc1やA375に発現する表面分子(CD29、CD54など)に対する抗体を付着させたAdv-FZ33による遺伝子導入・遺伝子発現は、コントロール(抗体の非存在下またはコントロールIgG併用でのAdv-FZ33、ならびに野生型Ad5ファイバーAdv-Fwtのウイルス)による遺伝子導入・発現の数十倍に増強できた。また、ErbB2を高発現するヒト卵巣癌細胞(SK-OV3など)への遺伝子導入は、ErbB2抗体の併用により、選択的に著明に(EGFP遺伝子導入細胞%で、5%から90%へ)増強できた。腫瘍細胞とZ33アデノウイルスとを架橋することによって遺伝子導入効率が高まるモノクローナル抗体をスクリーニングすることにより、腫瘍細胞に対して標的化の可能な表面分子と抗体の組み合わせの探索を開始している。先行しているヒト膵癌を標的化できる新規抗体作製のプロジェクトでは、すでに4種類の抗体産生ハイブリドーマが樹立されている。このうちの一つクローンA^*によって得られるモノクローナル抗体は、AdvFZ33アデノウイルスの膵癌細胞AsPc1への遺伝子導入効率を、非常に強く(200倍)増強し、有望である。
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遺伝子組み換えヒト神経幹細胞移植による脳梗塞の機能回復
基盤研究(B)
研究期間:
2000年-2001年本望 修, 端 和夫, 上出 廷治, 本望 修
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当該研究計画は、ヒト神経幹細胞の移植による脳梗塞後の機能回復の臨床応用を実現化することを目標としたものである。 (1)ヒト神経幹細胞を免疫抑制下の虚血モデル(ラット中大脳動脈閉塞モデル)へ移植し、1-3週後に組織学的解析を行なった結果、虚血巣内および周囲のpenumbra領域にドナー細胞が生着・集積していることを確認した。また、ドナー細胞はホスト組織内で神経細胞、グリア細胞等に分化しており、神経組織の再構築をおこなっていることが判明した。さらに、記憶・学習能力の改善をMorris water maze taskを用いて評価した結果、脳梗塞群で低下が認められた記憶・学習能力は、移植により著明に改善してくることが認められた。また、運動機能の評価をトレッドミルテストで行った結果、脳梗塞群で約50%程度の低下が認められた運動機能は、移植により6週間で約75%程度まで改善していることが判明した。 (2)自家移植へ向け、subventricular/subependymal zoneからの安全な神経幹細胞の採取方法をサルを用いて確立した。成熟脳内に存在する神経幹細胞をドナー細胞とする場合、自家移植療法の可能性が考えられる。ヒトにおいても神経幹細胞は成熟脳内で脳室周囲に存在することが確認されている。同部位は一般にSilent areaとされており、脳組織を採取しても、臨床上、特に問題となる症状の出現は認められない部位である。本研究では、サルを用いて、安全に、神経脱落症状を誘発することなく少量の脳室周囲組織を採取し、神経幹細胞を抽出・培養することが可能であることを実証した。さらに、得られた細胞を脳虚血巣へ移植し、神経回路の再建における効果を確認した。以上のように、補助金は補助条件に従って、非常に有用に使用されている。
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ヒト神経幹細胞の移植による中枢神経系疾患の機能回復
奨励研究(A)
研究期間:
1999年-2000年本望 修
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当該研究計画はヒト神経幹細胞の成人脳における存在確認、局在、抽出・培養、脳内への移植療法の検討を主題とし、損傷を受けた神経回路の再構築を試みるものであった。成人脳における局在の解析、抽出・培養方法の確立、脱髄疾患・虚血性疾患への移植実験は昨年までの研究ですでに達成されている。本年度は以下の研究結果を得た。 1:ヒト神経幹細胞の外傷モデルへの移植:ヒト神経幹細胞を免疫抑制下の外傷モデル(ラット除皮質モデル)へ移植し、1-3週後に組織学的解析を行なった結果、同部位にヒト神経幹細胞が生着、神経細胞やグリア細胞へと分化し、神経組織を再構築することが確認された。また、ホスト正常脳内へと遊走している所見、および損傷部位より正常脳内へ神経突起を伸ばしている様子も観察された。さらに、損傷部位と正常神経組織との移行部においても瘢痕組織の形成や腫瘍性の増殖は全く示さず、両領域間でスムーズな組織移行が観察された。 2:神経栄養因子で分化を誘導した。神経幹細胞は神経栄養因子を使用しなくてもmitogenの添加を中止するだけで分化を開始し、約半数はneuronになり、また約40%はastrocyteへと分化した。また,ごく少数であるがoligodendrocyteへの分化も認められ、神経系の主要3系細胞に分化することが確認された。一方、神経栄養因子の添加では、さらに選択的な分化を誘導することが可能でった。例えば、PDGFを添加した群では,neuron細胞の比率が多くなり,astrocyteの割合は減少する。同様に、CNTF添加群では、グリア系細胞への分化が促進された。 神経幹細胞から分化させた神経細胞の機能解析を電気生理学的に検討すると、分化誘導後、約4週間で活動電位を発するようになり、同時に、神経伝達物質に対する反応性も示した。また、免疫細胞学的解析でも神経伝達物質とその受容体の発現が認められた。さらに、細胞間のシナプス伝達も電気生理学的に確認され、同所見は電子顕微鏡での超微細構造の観察でも確認された。これらの結果より、成人脳由来の神経幹細胞は、移植後、ホストの神経組織内でも機能的に分化し、神経ネットワークを再建でき得ると推測された。 3:Major Histocompatibility Complex(MHC)の移植免疫への影響を検討:神経幹細胞はホスト神経組織へ移植されるとMHC抗原を呈することが判明し、移植療法において拒絶反応を考慮せざるを得ないことが確認された。さらに、MHC class I and class II knock-out由来の神経幹細胞をドナー細胞とした実験でも、同抗原提示が拒絶反応に大きく関与していることが判明した。 以上のように、補助金は補助条件に従って、非常に有用に使用されている。
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中枢性脱髄疾患に対する遺伝子組み換え細胞の移植による機能回復
基盤研究(C)
研究期間:
1997年-1999年上出 廷治, 本望 修
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神経移植療法の基礎・臨床研究はパーキンソン病を中心に数多く見られ、その一部は臨床的にも有用性が実証されているが、中枢性脱髄疾患への神経移植治療に関する研究は、世界的にも実験動物レベルの研究が散見する程度である。当該研究計画では,世界に先駆けて、成人臭神経より抽出・培養した olfactory ensheathing cell による髄鞘の再形成に成功した。さらに、成人脳より神経幹細胞の分離・培養clonal expansion (cell-lineの確立) にも成功し、ラット脊髄脱髄モデルへの移植実験により機能的な髄鞘の再構築に成功した。人工的に脱髄をおこさせた哺乳類中枢神経軸索に対して、ヒト成人脳由来の神経幹細胞を移植することで適切な髄鞘再形成を誘導し、神経伝導機能の回復を実現した。髄鞘再形成後の軸索膜上では正常なイオンチャンネルの再配列、軸索周囲におけるイオン環境 (ホメオスターシス) の回復を認め、正常なインパルス伝導を再現できている。これらの研究成果は成人の神経系細胞においても、適切な方法を用いれば再生能力を引き出せることを証明するものであり、中枢性脱髄疾患に対する神経移植療法の開発において非常に有用な結果を得たと思われる。今後は、臨床応用を具体的目標として、よりヒトに近い primate を用いた多角的で体系的な検討が必要と思われる。 以上のように、補助金は補助条件に従って、非常に有効に使用されている。
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側頭葉てんかんに対する遺伝子療法-海馬へのGABA産生細胞移植-
奨励研究(A)
研究期間:
1997年-1998年本望 修
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昨年度は、GABA合成酵素であるglutamic acid decarboxylase(GAD)のhuman cDNA expression vector(pC1-neo-GAD)を作製し、lipofection方法にてhuman astrocyteへ導入後、発現をimmunocytochemistoryで確認した。さらに、それに伴う細胞内GABAの上昇をimmunocytochemistoryで確認した。 今年度はGAD mRNAの発現をin situ hybridizationにより確認した。さらに、限界希釈法にて細胞内GABA濃度が十分高められた細胞を選別・clonal expansionし、highly expressed cell lineを確立した。また、組胞内GABA濃度の上昇はHPCLによっても確かめた。 われわれは、Nipecotic acid(NPA)にはGABA transporterのreverse operationにより細胞内free-GABAを細胞外に放出させる作用があることを以前より提唱しており、この作用を利用して、細胞内free-GABAレベルを間接的に評価してきた。今回の研究でも上記に得られた細胞に対するwhole-cell voltage clamp in vitro下におけるNPAのmicro-applicationによるGABA current(Cl^- current)の測定により、細胞のGABAの含有量とGABA放出能の測定を行なった結果、human GAD遺伝子導入細胞で著名なGABA currentの上昇を認めた。現在、上記細胞をラット脳内に移植し、in vivoにおけるGABA放出能の測定と抗痙攣作用の検討を行なっている。 以上のように、補助金は補助条件に従って非常に有効に使用されている。